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「住」は、「衣・食」のように一種の流行のような形で火がついて、ブームが沈静していく段階で私たちの日常生活に当たり前のものとして定着していくというような形態ではなく、もう少し長い期間をかけて、徐々に積み上がるような形で浸透していくものではないのでしょうか。
そうした積み上げのなかで伝統が形成され、「衣・食」と異なった形で文化を生み出す。
その意味で「住」は資産財なのであり、国の文化の基盤を形づくって大変残念なことですが、戦後の日本に欠けていたのが、資産財を〈民〉をベースに展開していく上での具体的な指針です。
田中内閣において実行された「日本列島改造論」は、いくものなのです。
公共の資産財形成をベースに展開され、日本の国力を向上させました(もちろん、それが同時にさまざまな弊害を発生させている側面もあります)・バブル崩壊後の「失われた十年」において示されなければならなかったのは、まさにたちの生活水準を向上させるための、これからの「住まい」の在り方を具体的に明示した上で、「住まい」を資産財として普及させるために必要とされる諸制度の制定と実施を断行すべきだったのです。
先述の「土地神話」が、そのような動きを阻害しました。
建物も含めた不動産の価値が、収益還元法的な発想で評価されず、周辺の相対的な価格にもとづくというのは、言い換えれば建物に資産的な価値を認めないということに等しい話となります。
民需に基づく資産財の展開を、「住」という分野で実現していくということは、具体的に言えば「住」が流通する市場をつくる、ということになります。
しかし、この分野において現実的に「土地」にしか資産価値がないとするならば、そこで形成される市場も「土地」に関するものだけということになります。
結局のところ、「土地」だけではなく「住まい」に資産的な価値を与えることに真剣に取バブル景気を支えた「土地神話」は、バブル崩壊の直撃を受けはしたものの、それ以降もしばらく漂わせていました。
たとえば分譲マンションでは、九四年前後に第六次マンションブームと言われた大量供給の時期がありました。
「地価の下落もそろそろ底入れで買いどきだ」、「いまなら家賃を払うよりローンを払うほうが安く、しかも自分のものになる。
こんな時代に買わない人はどうかしている」とのセールストークに乗せられて、それまで手の出せなかった購入層がこぞって分譲マンションに飛びつきました。
その後も、新築分譲価格は下がり続けました。
当時購入したマンションは、売ろうと思ってもすでに新築時の半値前後に下落したケースもあるといいます。
バブルが弾けて残ったもの低金利や優遇税制に支えられて、戦後六度目と言われたここ数年のブームでさえ、優遇税制の延長にもかかわらず終息しようとしています。
土地の価格は下げ止まらず、しかも供給されるマンションは相変わらず基本構造が脆弱なものがほとんどだからです。
今や「土地神話」は完全に過去のものとなりました。
ピーク時には二四○○兆円以上あったと言われる土地の時価総額は、一六○○兆円前後に目減りしています。
さらに年々、一○○兆円近く資産価値は減り続けています。
都市部やその近郊での目減り感は、これ以上のものがあるでしょう。
土地の値上がりのみに頼った資産形成は、もう期待するほうがおかしい時代になっているのです。
考えてみれば、日本独特の「土地神話」は、国際的にみて極めて異常な《思い込み》でしたが、日本の歴史からみても不自然なものでした。
たとえば「一生懸命」という言葉がありますが、これは六○年代に定着したと言われる新語で、もとの言葉「一所懸命」は、一つのところ(土地)に命をかけるという意味です。
鎌倉時代の御家人が、もともと所有していた土地を安堵(保証)、褒賞として与えられた領地を必死になって守ることから、のちに「頑張る」ことを「一所懸命」という、御家人がそれほど土地を大切に守ろうとしたのは、土地それ自体に価値を認めていたからではありません。
米に代表される農作物を土地が生み出したからなのです。
事実、領地はその広さではなく米の収穫高(石)で評価され、その習慣は江戸時代が終わるまで続きました。
「何千石の旗本」とか「何万石の大名」などの表現は時代劇でおなじみです。
この発想は、現代でいえば収益還元法にあたるといえるでしょう。
つまり、土地の生み出す収益に関係なく右一肩上がりで地価が上がり続けるという神話は、どう考えても崩壊して当然だったのです。
バブルの崩壊は、土地に対する神話が幻想であったことを鮮明にし、本来資産財であるべき「住」を消費財として扱い、結果的に扱いきれなかったという日本の歪んだ構造を、よりあらわにしたと言っていいでしょう。
景気を牽引すべき「住」のブームが到来しなかった、あるいは「土地」バブルが崩壊したことは、私たちの「住まい」観にどのような影響を与えたのでしょうか。
実的には、その人が選択したい(できるという意味を含めて)と思う人生設計が、「住まい」観に多大な影響を与えるものです。
そうであるからこそ、バブル崩壊が私たちの「住まい」観に与えた影響は大きかったと言えるのです。
バブル崩壊前までは、多くの人の人生設計はいわばカスタムメードでした。
良い大学に入って一流企業に入社して、少なくとも大過なく勤めれば、定年まで年功序列と終身雇用に守られたライフプランを描くことができました。
その路線をベースに、自分なりの味付けオーダーメードになったライフスタイルを少々行うというのが、多くの人の人生設計の基本パターンだったと言っていいでしょう。
したがって「住まい」観も、若いうちはアパートで一人暮らし、結婚したら賃貸マンションに住んでお金を貯めて、四十歳を過ぎたら念願のマイホームという基本路線を、多くの人が描いていました。
バブル崩壊後はもはや、これが基本路線とは言えなくなりました。
終身雇用と年功序列は崩れ、大企業が倒産する一方で、ベンチャー企業が信じられないような成功をおさめる例も少なくありません。
時代にたとえるなら戦国時代のようなこのときに、大半の人にとっての人生設計は、今やカスタムメードではなく、オーダーメードになったと言わざるを得ません。
当然「住まい」観も、カスタムメードの路線が基本路線とは言えなくなってきます。
「賃貸永住派」という言葉がぽつぽつ新聞や雑誌でも見かけられるようになりましたが、むしろこれからは、「賃貸永住派」という選択のほうが理にかなっているとさえ言える。
これからは、いでしょうか。
その一方では、こんな話もよく聞きます。
れても、毎月のローンの額は家賃〈の額と大差がない。
だったら、思い切って一戸建てを買ったほうがいのじゃないか.確かに道理の通った話のように聞こえます。
家賃を払うのとローンを組むのでは、やはりリスクは全然違うと考えるべきでしょう。
家賃を下げることは必ずしも難しくありません。
というのは、より家賃が低いところに転居すればよいのです。
一度組んだローンの額を下げることは至難の業です。
日本では、家をもつのは一部の裕福な層だけで、一般庶民は借家住まいが当たり前でした。
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